Lover

あれから夢を見ることがなくなって
それまで時々見てはいたのにこうなってしまって出て来なくなるとかつれない冷たいそういうとこだぞと思っていたのがある日
夢の中で自分は夢とは気づいていなくてでも何が起きているかは知っていて、場面はすぐにどんどん変わる、公民館の宴会場みたいな小さなところで歌っているところ、人と話しているところ、移動の車に乗り込もうとしているところ、ああでももういなくなっちゃうのにと思うけどどんどん場面が切り替わって、ホテルのビュッフェの朝ごはんみたいな場面、テーブルを挟んで中高生くらいの女の子と二人でいてこれまで見たことのないような穏やかな優しい表情でももういなくなるのにと、その表情と女の子の後姿を見ながら胸が潰れそうだった、
それが今年の初夢で、こんなふうに出てくるなんて本当にどSだよねと思った、自分が思い返すのは冷たくつれなくつーんと見下ろす目で、
あれから思いもよらないタイミングで埋め草のようにして流れてきたりするのでテレビもラジオもオフにしていた、昔の忘れ切っていたツイートがほじくり返されて鍵を掛けた、たくさんのアカウントのフォローも外した、画像表示もオフにして何も目にしないようにしていた、声も顔もずっとだめだった名前も見るのも耳にするのもだめだった、たまに少し覗くと美辞麗句きれいごと他の世界の言語みたいな色々な言葉が並んでいてそれを収集したりした、でも不毛だと思ってやめた、どう見ても嘘とわかるようなことが美談としてもてはやされたりしていた、他の人のことはどんどんどうでもよくなった、誰のこともわかりたくなかった、それまで見ていた景色が全部変わっていた、自分には何も見えていなかったのだと思った、今さら気がついてもどうにもならなかった、

天使とか聖母とか言っておもちゃにされて持ち上げられるのが嫌だった、コンビニエンスなそれっぽい言葉で消費されていくのが嫌だった、もっと大事にしたらよかった、どんなに大切かどんなに素晴らしいかどんなに冷たくて優しくて全部が見えているようで抜けているかその全部がどれほど愛おしかったかもっと手紙に書けばよかったへたでもいいから書けばよかった、

そういう時に君島さんが天使になんかしないよと言ったのだ、
(初めて聞いたのは有楽町だと思っていたけれど披露されたのは神田だったようだ)、
独奏でも合奏形態でも何度か聞いて、聞くたびに
歌も言葉も段々迫ってきて

夏の鏡の象の鼻で西田さんとふたりで言いたいことがあるけど言えねえ~めちゃめちゃ言いたい~けど言えねえ~とめちゃめちゃ言っていて、あの時もう録っていたのか

合奏形態の冬のツアーの始まる日に、何の告知もなく0時に突然発表されて、
SHIN-ONSAIの時、自分としては珍しく歌詞が先だったと言っていて、その頃は、書いた頃にはきっとなかったことがいろいろ起きていて、それでもこの曲は全てを包むようにぶつけるように歌われて

音源としてリリースされたこの曲はこれまで聞いてきたどれとも違っていて

わたしはその純粋さを愛していると思ったしその純粋さがどこかに届いたり傷になったり明かりになればいいと思った、そうならないとしてもそれをこの世で見ていたいとも思ったのだ、

一年経って、今この曲が聞けてよかったと思う

https://kimishimaohzora.lnk.to/lover

(これはハイレゾで聞くのがいいと思いました)

君島大空 – Lover

日々