マンスリー2011
もういい
もういいと
声がする
もう終わらせてよいと
もう始めてよいという
声が
死んだ仔猫が
ガラス玉を抱いて眠る
1月
ファースト
初めての
サムタイムス
時々
思惑なんて関係ない
そこは自分が決める
反動は
正当だと時折思う
2月
足早に去るものは
足早にやってきたのだったか
今はこれがわたしたちの春で
泣きながら
あなたの声がする方に手を伸ばす
3月
夢を見ていた
あの人がいなくなって
何かが残されて
教えてナイトメア
あなたの行く先
理不尽に
昼と夜とが入れ替わる
4月
あなたに似ている人がいる
あなたに似ている声で泣く
あたしは
帰ろう
ひとりで
夕焼けが
空の隙間に這いつくばる
5月
ガラス戸一枚
だ
わたしとの間にあるもの
こんな確かな不確かさに気づく
夕
とれかけた
ボタンの角度に目をやる
6月
みんなが空を見てる
何か降りてくる
もうだいぶ慣れてしまった
僕ら
遠ざかる
最終電車に話しかけたい
7月
何もないので
くっつけて下さい
あなた
瘤とか皺とか
白濁した角膜とか
そういうものですね
裏切った
確証だけが掌の中にある
8月
少しずつ短くなる
僕らの夏
何も残せないし
思い出せないし
やり直せないし
置いてきた
白紙の行間が呼び止める
9月
変ね
忘れたはずのことばかり覚えてる
僕ら
大事なことはみな置いてきてしまった
朝霧が
生まれる前の嘘を隠す
10月
落ちてゆく
わたしたちの
重さと
虚
重なる時の音だけが確かで
夕映えが
後ろ姿を縫い留める
11月
日常に感謝する
クレームに感謝する
ばかばかしい揉め事に感謝する
平凡に感謝する
無関心に感謝する
ありとあらゆる怠慢に感謝する
あなたがここにいることに感謝する
12月
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