マンスリー2010

2020年10月10日

暑い扉が開く
音がする
かすかに

カーブの先
呼ばれない名前
熱いカップ

満たされた
獣が目を閉じる夢を見る
1月

声が聞こえる
もしもし
空耳

あのひとはいってしまった
いって
いって

頂に
色を失った陽が残る
2月

雲が流れる
雲が見ている
雲に知られる

僕は死ぬ
そして還る
あたたかいところへ

ずっしりと
抱えきれないよろこびが宙に集う
3月

Goodbye my dear sweet days, ah,
みんないなくなっちゃう

目を閉じる
倒れる
寝返りをうつ

ひからびた
泥の隙間から笑みがこぼれる
4月

駅前の店で
キスしようか

もう少しで
読めそうな文字が読めない
手がかりは他にない

カーテンが
揺れては止まって何かを隠す
5月

花が咲く
打たれる
落ちる
実をつける

かれた手を添えて
一歩

夕暮れが
盲いた蝶を呼んでいる
6月

夕立を待っている
あまり
劇的にならないうちに降り出して

空は藍
透かして見える程度のものは必要ない

貝殻に
閉じ込められたふりでうそぶく
7月

フワリと浮いた
僕らは一緒だった

日射しが記憶を消す
口の中に砂
君はもう次のページだ

ひび割れた
唇の隙間に指をねじ込む
8月

余白を下さい
傷をつけるので

少しでいい
裂け目から漏れ出す日の光を忘れないようにしたいので

生き急ぐ
バッタが片足を置いていく
9月

光の粒
光の泡
指先で踊る白濁の神話

悦びにむせび泣く
朝が来る

街燈が
震えることを隠そうともしない
10月

みんな死んだ
10月にみんな死んだ
ひとりで

消える
在り続ける
everything is nothing

はにかんだ
空が先端を尖らせる
11月

ニンフが鱗粉まきちらし
僕は真昼に穴を掘る
爪立て爪立て爪立てて

ああ 柳 柳
デズデモーナの櫛はどこ

冷えた日が
あなたの背中に影をつくる
12月

創作