マンスリー2006
目が覚めて
ひとりで息を吐く
見た事のない鳥がいて
こちらをみている
冷えた手で
あなたの声を忘れまいと耳を塞ぐ
1月
似たような犬が
似たような服を着て散歩している
みんな嬉しそうだ
星が出る前に
もう一度窓を開けたくなる
2月
おめでとうおめでとうおめでとう
新しい夜が生まれる
おやすみおやすみおやすみ
もう大丈夫
ささやかな願いの裏で
昨日咲いた花が音もなく落ちる
3月
いいね
いいよ
目配せして飛ぶ
その先はわからない
誰にも
燃えながら
何かが見えた気がする
4月
どうしてだろう
まぶしくなるんだ
目はずっと閉じたままなのに
いないはずの
虫の声だけが聞こえる
5月
いつからだろう
虫の羽音が耳元でするようになったのは
雨はこんなにも頼りなげに降っている
原色が
丸めた背中を突き刺す
6月
乾いた花が
次から次へと落ちてくる
ように
声を殺して立ちすくむ午後
遮られた
空の色だけを夢想する
7月
さあご覧
何もないだろう
これが現実/未来だ
太陽と空と水
これは僕らのものじゃない
わかるね
初めて
卵を産んだ虫が死のうとしている
8月
落ちる
落ちる
落ちる
花が
太陽が
定められていたはずの現実が
朽ち果てた
花びらの下で蟻が蠢いている
9月
ねっとりとやってくるそれは
まるであの人の吐息のよう
切れた電球みたい
熱かっただけでもう役には立たない
動かなくなった蜘蛛を
金木犀の茂みに向かって吹き飛ばす
10月
ひまわりなんかいらない
菊なんかいらない
これっぽっちのコスモスじゃ母の棺が埋められない
月だけが
ずっと見ている
いとしいものが
穏やかに狂っていく
11月
光っているのは星
落ちてくるのは人工衛星
宇宙船の破片
破片
破片が降り注ぐ夜
断片の意味を調べようと手にした辞書は滑り落ち
明るい駅で
知らない列車に乗る夢を見る
12月
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