マンスリー2011

2020年10月10日

もういい
もういいと
声がする

もう終わらせてよいと
もう始めてよいという
声が

死んだ仔猫が
ガラス玉を抱いて眠る
1月

ファースト
初めての
サムタイムス
時々

思惑なんて関係ない
そこは自分が決める

反動は
正当だと時折思う
2月

足早に去るものは
足早にやってきたのだったか

今はこれがわたしたちの春で

泣きながら
あなたの声がする方に手を伸ばす
3月

夢を見ていた
あの人がいなくなって
何かが残されて

教えてナイトメア
あなたの行く先

理不尽に
昼と夜とが入れ替わる
4月

あなたに似ている人がいる
あなたに似ている声で泣く

あたしは
帰ろう
ひとりで

夕焼けが
空の隙間に這いつくばる
5月

ガラス戸一枚

わたしとの間にあるもの

こんな確かな不確かさに気づく

とれかけた
ボタンの角度に目をやる
6月

みんなが空を見てる
何か降りてくる

もうだいぶ慣れてしまった
僕ら

遠ざかる
最終電車に話しかけたい
7月

何もないので
くっつけて下さい
あなた

瘤とか皺とか
白濁した角膜とか
そういうものですね

裏切った
確証だけが掌の中にある
8月

少しずつ短くなる
僕らの夏

何も残せないし
思い出せないし
やり直せないし

置いてきた
白紙の行間が呼び止める
9月

変ね
忘れたはずのことばかり覚えてる

僕ら
大事なことはみな置いてきてしまった

朝霧が
生まれる前の嘘を隠す
10月

落ちてゆく
わたしたちの
重さと

重なる時の音だけが確かで

夕映えが
後ろ姿を縫い留める
11月

日常に感謝する
クレームに感謝する
ばかばかしい揉め事に感謝する

平凡に感謝する
無関心に感謝する
ありとあらゆる怠慢に感謝する

あなたがここにいることに感謝する
12月

創作