マンスリー2008
感じる
初期微動
ここにあるもの
のかたち
祝福され
ささやかに在る
すべてが当たり前のように美しい
意味を
鮮やかにすり抜けた光が来る
1月
しまった
ここじゃない
ああ
これでもない ね
手探りの
えつらく
コマ落としで
光と陰が行く
2月
おや あれは
去年のちょうちょの子どもですね
それじゃあ これは
夏にはきっと死んでるでしょう
無意識の
命がひとつ瞬いている
3月
ここにはいないよ
あの
ぬかるみと埃の中にいるんだ
ああ
何もかも終わる始まる裏返るしくじる
陽が射して
ままごとの手が少しだけ止まる
4月
君の形をしたあれは
何だったのだろう
もう
いってしまった
見えない
後ろ手に
光と影を探そうとする
5月
わたしは遺書を書いていない
死ぬ気はないのだ
まだ
あの人に
あの本を送ろうか
ゆっくりと
壁の冷たさに手をやる
6月
夜が白くなる
夏至は
とっくに過ぎた
終わらない
終わらない
遅い風が
舟底で澱み始める
7月
床が
動く
動いて
止め
止ま
さんざめく
下校者たちの汗を感じている
8月
雷とか
雨とか
そんなに頑張らなくていい
濁ってても見えるようになる
いつか
手探りで
揺れるカーテンを止める
9月
秋雨
秋晴れ
どっちやねん
あー
いい空だ
ゆっくりと
ありたい方へ転がってゆく
10月
あの虹はどこへ行きました
か?
凍りついて割れました
ほら
そこ
あたためた
地面に置いた掌が冷える
11月
道行く人は皆しあわせそう
足早に
背中を丸めて
抱え込むのは古い球根
春には咲いていたはずの花
あの人の
冷たかった手に触れていたい
12月
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