2025-08-31 新宿(映画「国宝」~献血)

映画『国宝』公式サイト

話題になってるなーとは思っていたけど全然見るつもりはなくて、なのになぜか前日になって突然(見よう!)という気になってチケットを押さえて行ってきた。上映時間2時間55分の長尺。

10:50~13:55(予告編10分を含む)

キャッチコピーが「ただひたすら共に夢を追いかけた」だけれどそういう筋立てではなくどちらかというと芸に取りつかれた男達の話だ。何かに取りつかれることを夢と言えるかどうか。それもドラマではなくサーガ。原作を読んでいないので何とも言えないところが多すぎるというかツッコミどころ満載で。

まず何もかもがきれいすぎる。人間ってもっと汚くないですか。本性が善の人間しか出てこないというかそういう存在としてしか描かれない。主要人物はみな男性で女性は悲しい添え物としてしか扱われていないところもきれいすぎる要因ではないか。女が生きていたらとんでもなく汚くなるでしょう。800ページ超という原作を3時間の映画に落とし込んだせいなのか元々こうなのかわからないけれども。劇伴も美しく作られているしエンディングに流れる主題歌もそれはそれは美しい、この歌唱は井口理、やはり男だ。

【主題歌MV】 映画『国宝』|主題歌「Luminance」原摩利彦 feat. 井口 理(King Gnu) – YouTube

物凄く気になったのが糖尿病の扱いで、劇中、親子二名が糖尿病で命を落とすのだけれども、遺伝ということは二型か。これがどう見ても二人とも二型糖尿病とは縁もなさそうな体形で唐突に見えたのと、二型だとするなら親父が糖尿とわかってる時点でおかみさんは健康管理しなかったのかと。そこまで医療が発達していない時代ということなのだろうか。息子は辛酸をなめた末に発症するのだけれどそれも仕方のないこととして、なんだろうか。血という装置としての遺伝的性質ということなのだろうけどこの糖尿病がどうにも解せぬ。

あと、任侠一家に生まれて歌舞伎役者の家に引き取られる男が主人公なのだけどこれがたいへんなすけこましで、なんでどの女もこいつにほいほいいてこまされるのかがさっぱりわからんかった。あとから原作について見てみたところ主人公については「この世ならざる美貌」とある。そうなのか……そもそもそれがベースになってるのか。だとしたらあちこち納得がいく。甘いマスクねーくらいの感じで見てたので。

そう。甘いマスク。お顔立ちが整っているわねとは思うけれど、この世ならざる美貌、って……。毒とか狂気とかそういうのじゃないすか。人何人か殺していそうな凄みとか。あるべきものが欠けているとか。それか白痴美に振り切るか。実写でそれをやろうとするなら、もっと説得力のある筋立てがないといかんのではないのか。とにかく全編サーガであるので、時系列ですたすたすたと話が進んでいって、仕掛けとかがあまりない。おまけに出てくる人にみんな裏がない。悪い人がいない。そんな話あるか。そういうおとぎ話と思って見るしかないのか。

舞台のシーンは凄いんですよ、俳優という本業の傍ら時間をかけて日本の伝統芸能の稽古をつけて臨んだのだろうなと、そういう凄さ。きれいだしね。そこに時間を割く、情熱の情、みたいなものが前面に出てくるから、なんなんだこれ、って感じるのかなあ。原作の執筆にあたっても取材に相当の時間をかけたとかで、それが枚数の多さになってるのかなと思ったりもしました。情、なんだろう。

上方歌舞伎の話であるので登場人物はまあまあ大阪弁なんだけど、これを実際に大阪の人でやったら印象違うのかなとも思いました、おかみさんは藤山直美とか。でもそうしたら食事管理とか厳しくて家族が糖尿で倒れるとか許すまじ、になりそうだ。そういうリアルは一切ない。とにかくきれいな世界。誰も何もなくさない。

女形の人間国宝役が凄いなと思ったらこれが田中泯だった。なるほどなあ。大野一雄さんを連想しましたね、書かれた顔はよかったなあ。もっとも、書かれた顔の舞台シーンは本物の歌舞伎役者が演じているわけだし他に登場する人たちも殆どがリアルな人物として現れるし、そもそも描こうとしているものが違うものね。国宝は女形の話でありながら女形とは何かということには全く触れられず、単に芸としての表象みたいな扱われ方しかされてない。女についても形だけしか描かれていないのと同じだ。原作がどうなってるのかはわからないけど。

唯一涙が出てしまったのは役者が舞台で絶命するシーンでした、これはねえ……きついものがある。映画館のスクリーンいっぱいに。というか、劇中で役者が二人死ぬんだけど、どっちも舞台の最中に倒れるの、で、演目の最中に幕が引かれるの。酷くね。そんなのが二度も起きるの。ほんとうに酷いよな。何も知らずに見たものだから、うえってなりました。そしてまだだめなんだ、ということがわかった。平気になってたまるかよ。ばか。

映画を見終えてたらふくご飯を食べて買い物して帰ろうとしたら献血の看板を持って呼び込みしてる人がいたので、できればいいかなーくらいの気持ちで行ったらオーケーだったので献血してきました。前に行った時は濃さが足りなくてダメだったから今回できてよかった。全血400ml。

ミニムーンライト貰っちゃった

余談。映画は新宿ピカデリーで見ました。駅から近いし、シニア料金が60歳からなのだった。新宿バルト9のシニアは65歳以上だった。違うものなんだな。好きよピカデリー。

更に余談。なんでいきなり映画見に行こうと思い立ったかというと、コンテストに応募してたカクヨムの企画が9月1日正午締め切りで、実質8月中だよなと思って毎日更新してたのが最後までできて、ヤッターって気分になったからだ。流行りものを流行ってるうちに追うのもたまにやりたいというのもある。コンテストの参加も流行りものみたいなもんだよね。つーか応募総数4,383作品てすごない。ラスト二日くらいの駆け込み凄かった。夏休みの宿題的な感覚か。ともかくやることやったからあとはZINEフェスに向けて新刊作ります。作ります。作ります。