十月

猫がいない町にいた
角にも 窓にも 鉢の陰も
暗かった
いいえ
暗くなかった
暗がりに眠る猫はいなかった
音がしない
そうね
足音はたてないわ
どんな夜にも
猫がいない町にいた
二階にも猫はいなかった
猫は
いなくなって

夜はこなくなった
眠るだけだった
舐めるだけだった
猫のつけた傷を