特性

還暦になったら何か変わるだろうかと思っていたけれどそんなことはなかった。
わかってきたのは地震のP波で目が覚めること。横になっていて震度3くらいだとだいたいわかるようだ。わかったからといって何ができるわけでもない、あ、と目が覚めて体を起こしかけたくらいのところでS波がきてぐらぐら、と揺れる。防災アプリの通知が来る前だ。
たまにこういう人がいるらしいがおそらくニュータイプでもなんでもない。ちょっとだけ人と違っていて、世の中的には役にたたない、けれど確実に自分にはあって手放すことのできないもの。どうも自分にはそういうものが備わっている気がする。生まれ持った性質。特性。そういうやつ。
そういえば、普通の人は辛くなっても死にたくならないらしいと聞いた。マジかよ。そんなんボーナスカードじゃん。こちとらデフォで死なないようにするので手一杯なんだぜ。生命維持レベルでスタートラインが違うんだということをどのくらいの人がわかってるんだろうか。わかってなくてもいいのか。しんどい人に心ない言葉をかけるのは人の道に反するというのは社会的コンセンサスのようだし。そういう、これは大丈夫ですよね、という確認をひとつひとつとって生きていかないといけない、それをやるのが社会性というやつなんだろう。違うか。
何にせよ、わたしたちは考える葦であり動いちゃう管であり食っては出すたんぱく質群だ。今日もまた何らかの残滓。それでいいことにしたい。

日々